どんなもんじゃい!興毅涙の初防衛
12月21日10時48分配信 デイリースポーツ
ボクシングWBA世界Lフライ級タイトルマッチ(20日、有明コロシアム)、これで完全決着や!WBA世界ライトフライ級王者・亀田興毅(20)=協栄=が、挑戦者フアン・ランダエタ(28)=ベネズエラ=を3-0の大差判定で下し初防衛に成功した。序盤からフットワークとジャブを駆使するニュースタイルで臨んだ興毅は、スピードとパワーで圧倒し、10回にはボディー連打の猛攻で追い詰めた。最大11ポイント差の圧勝劇。140日間に及んだランダエタとの因縁に終止符を打ち、父・史郎トレーナー(41)への思いからリング上で感涙にむせぶ興毅がいた。
こらえきれなかった。マイクを握る興毅の手がかすかに震えていた。両ほおに熱いものが伝わる。「この4カ月間ずっとバッシングとかされて、ずっと前に出て守ってくれたんがオヤジ…。常に俺らの壁になってくれて…」。父・史郎氏への感謝の言葉。最後は声にならなかった。
長かった。世界王者となって4カ月間、各方面からバッシングを受け、自分ばかりか家族までがさらしものにされた。前日までの139日間は、人生で最もつらい日々だった。死ぬ思いで手に入れたベルトは、8月2日以降、ケースに入ったままだった。ベルトまでが自分を拒絶しているように思えた。
この日、リングに上がるまで2度泣いた。最初はバッシングの嵐が吹き荒れた8月3日の夜だった。そして2度目は9月29日。スパーリングで左まぶたをカットした夜だった。胸中は悔しさと情けなさが入り交じっていた。どん底だった。「俺はもう駄目や」。決して弱音を吐かない男が父に漏らした。
1冊のボロボロのノートが興毅を救った。めくったページは04年2月。練習日記には、タイに遠征してWBCフライ級王者ポンサクレックとスパーリングをしたことが記されていた。「バチバチにやったった。来年は俺が世界チャンピオンになってるやろな」。未来の夢を語る17歳の己に励まされ、原点回帰を誓った。
リング上ではこれまでとは別人だった。右ジャブを使いフットワークを駆使。スキを見ては相手の懐に飛び込みボディーを打ち込んだ。10回には怒とうのボディー連打。理想とする元世界5階級制覇のシュガー・レイ・レナードばりの「万能型」ボクシングでランダエタを全く寄せつけなかった。
「どんなもんじゃい!」。リング上で4カ月分のうっぷんを晴らすように言い放った。そして4カ月分の涙を流した。完全決着-。世間の荒波にのみ込まれ、激動の140日を乗り越えた興毅は言った。「1、2日はゆっくり寝たいわ」。傷つき、成長した20歳の本音だった。