亀田ファンは「物足りない」/ボクシング
12月21日9時57分配信 日刊スポーツ
<プロボクシング:WBA世界ライトフライ級タイトルマッチ12回戦>◇20日◇東京・有明コロシアム◇観衆1万人
WBA世界ライトフライ級王者亀田興毅(20=協栄)と同級1位ファン・ランダエタ(28=ベネズエラ)の因縁の再戦は、3-0の大差判定で亀田の完勝だった。元世界王者ら専門家の多くが「ニュースタイル」を絶賛した。しかし、豪快なKOを期待したファンの意見は賛否両論だった。日刊スポーツの50人会場アンケートで98%が「亀田の勝利」を支持したが、半数以上の観客が試合内容に「物足りない」と注文を付けた。勝利を喜びながらも、最大の魅力だった「ケンカ」を返上した戦いぶりにファン心理は複雑だった。
亀田の勝利に異議はなかった。会場のファン50人のうち49人までが「亀田の判定勝ち」を支持した。千葉・市川市の坂本丈さん(30=会社員)は「今日は前回とは違って足を使ってうまく攻めた。文句のつけようのない勝利」と断言した。ほぼ全員が結果には納得していた。その一方で「試合内容」には首をかしげるファンも多かった。
デビュー以来、亀田は開始ゴングから強打を振り回してKOの山を築いてきた。自ら「亀田とKOはセット」と豪語してきた。しかし、この日の試合では「KO」を予感させる場面はほとんどなかった。東京・台東区の野口誠さん(34)は「5回くらいまで硬さがあった」と指摘。その上でKO勝ちを期待できる試合ではなかったと話した。
東京・港区の本川連さん(36=会社員)は今回の勝因になった「ニュースタイル」は、長期的に見ると人気の低下につながると分析する。「今回は勝ちにこだわる試合だったので、スタイル変更は仕方ない部分はあります。でも次も今日のような試合をすれば、そのうちお金が取れなくなるのではないか」。
意外だったのは亀田支持率が最も高いといわれる10~20代に女性ファンの意見も手厳しかったことだ。「亀田くんらしい、ガツガツした野性味がなかった」(高橋理絵さん=18歳)。ボクシングの技術よりも、常にKO狙って力でねじ伏せる姿に魅力を感じていたファンには、この日のニュー亀田は拍子抜けだったようだ。
唯一ランダエタ勝利とした神奈川・伊勢原市の藪井拓磨さん(17=高校生)は、亀田の奮闘を認めつつ、今回もホーム有利の判定という意見。特に1人のジャッジが11ポイント差をつけたことには納得いかないようで「次はベネズエラで戦ってほしい」と、あらためて完全決着を希望していた。
ファンは亀田に勝利ではなく、豪快なKO勝利を期待している。それは亀田自身がファンに植え付けてきたイメージでもある。ニュースタイルと亀田流をいかに融合させていくか。2度目の防衛戦でファンの真価が問われる。【高田文太】