亀田初防衛!3-0大差判定/ボクシング
12月21日9時57分配信 日刊スポーツ
<プロボクシング:WBA世界ライトフライ級タイトルマッチ12回戦>◇20日◇東京・有明コロシアム◇観衆1万人
WBA世界ライトフライ級王者亀田興毅(20=協栄)が涙の初防衛を飾った。同級1位ファン・ランダエタ(28=ベネズエラ)との因縁の再戦で、3-0の大差判定勝ちを収めた。従来のガードを固めて突進するファイトからフットワークを使うアウトボクシングに変身。圧勝につなげた。8月の初戦は微妙な判定にもつれた。バッシングにも見舞われた。体を張って自分を守ってくれたトレーナーの父史郎氏(41)とともに磨いた新スタイルでの完勝に、亀田の涙は止まらなかった。
嗚咽(おえつ)が止まらない。今まで我慢していた感情があふれ出る。横にいる父の姿は涙で曇っていく。因縁のランダエタに完勝した後のリング。亀田は「バッシングされた時、常に前に出て頑張ってくれた…。オヤジ… ありがとう。オレらの壁になってくれた」と、苦悩の4カ月を振り返りながら大事な父に感謝した。
鮮やかなイメージチェンジだった。試合開始のゴングから、亀田は前後左右に軽やかに足を使う。今までの突進する亀田スタイルとは真逆のボクシング。初回にダウンした8月の初戦とは違い、最初からペースを握った。5回にはノーモーションからの左ストレートを連発。10回には左右連打で見せ場をつくった。ランダエタを幻惑し、ジャブすら満足に出させなかった。完勝だった。
8月の苦戦でケンカスタイルは壁にぶつかった。微妙な判定は社会問題にもなった。すっきり勝ちたい。父史郎氏とともに昔のビデオを見直した。「いいところ、悪いところ見て、どうしたらいいか考えた」と父史郎氏。結論は足を使ったボクシングだった。
トレードマークのKOにもこだわらなかった。「亀田とKOはセット」と言い続けた男が、試合前のKO宣言を封印。12回の計36分間の判定勝負を強調した。ボクシングのスタイルだけではない。連日のようにメディアに露出した初戦前とは正反対に、公の場にはほとんど姿を見せなかった。恒例の直前公開スパーリングも中止。情報戦も含め、徹底して勝利だけにこだわった。
「テレビ見ている人で、オレのこと嫌いな人には、勝ってごめんね」。試合後の会見の冒頭で亀田は言った。精いっぱいの強がりだった。もともとは一家の中で、もっとも繊細なタイプ。本音は隠せない。「この4カ月間、楽しいことはなかった」とつぶやいた。判定問題のバッシング。全力で戦っただけの亀田にはどうすることもできない。強気なパフォーマンスとは裏腹に、苦悩する日々を送ってきた。
厳しいトレーナーの父史郎氏から甘い言葉はなかった。「落ち込んでる暇があったら練習せい。勝って見返せ」と叱咤(しった)された。リングで結果を出すしかない。完全決着を目指し、1日7時間半、父とともに練習を続けた。
8月に王座奪取したが、試合内容に納得がいかず、家で1度もベルトを見ようとしなかった。再戦の勝利で、初めてベルトを抱いて寝ることができる。「いろいろあったけど、ええ1年やった」。目標の10代世界王者、その後のバッシング…。栄光と挫折を味わった1年の最後、亀田はしっかりと勝利で締めくくった。【田口潤】