ボクシング 亀田興毅、初防衛成功 ランダエタに判定勝ち
12月21日9時56分配信 毎日新聞
世界ボクシング協会(WBA)ライトフライ級タイトルマッチ12回戦が20日、東京・有明コロシアムであり、王者の亀田興毅(20)=協栄=が1位のフアン・ランダエタ(28)=ベネズエラ=を3-0の判定で降し、デビューから13連勝で初防衛を果たした。両者は8月の王座決定戦で対戦。亀田が2-1で判定勝ちしたが、微妙な内容だったことから、判定に批判が集中した。再戦も判定にもつれ込んだが、亀田の完勝だった。国内の現役世界王者は6人のまま変わらず。
【戦評】
サウスポー同士の対戦は序盤、スタイルが固まらなかった亀田にランダエタが左右ボディとアッパーを好打して、互角の内容。五回から、亀田が右ジャブとフェイントを使い相手を揺さぶってリズムをつかむと、七回には左ボディから左右の連打を顔面に打ち込み、ポイントで有利に立った。十回と十一回にも上下を打ち分けてランダエタの動きを止めた亀田は、十二回にバッティングで減点されたものの、ジャッジ3人から支持を受けた。ランダエタは亀田の動きについていけず、終盤は手数も足りなかった。
▽亀田興毅 (前戦から)この4カ月は長かったが、いい決着がつけられた。前回が前回だっただけに、プレッシャーはあった。応援してくれたファンに嫌な思いもさせた。おやじが常に壁になってくれた。前回のことは忘れて。あれは亀田興毅ではなく、親せき。今回は本物。
▽森田健・世界ボクシング評議会(WBC)公認国際審判委員 今回は誰が見ても(亀田の)勝ちでしょう。ガードをしても、ロープに追いつめられるだけで(亀田の)ポイントになる。ただ亀田にはもう少し手数を出してもらいたかった。
▽原田政彦(ファイティング原田)・日本プロボクシング協会会長 亀田はよく勉強していた。打たれても下がらず、最後まで足を使っていた。
▽WBA・WBCミニマム級元王者・大橋秀行さん 勝ちに徹していた。終盤は前に出るかと思ったが、攻めたい気持ちをよく我慢した。1ラウンドで足を使っていた時点で、勝ちを確信した。
▽日本ボクシングコミッション・安河内剛事務局長 レフェリングは厳格だったし、採点もフェアで、クリアな試合だった。(審判員がいずれも中立地域となったのは)WBAも神経を使ったのだと思う。(はっきりした結果で)正直ほっとした。
▽WBCスーパーフライ級元王者・川嶋勝重さん ニュースタイルの亀田が見えた。出入りできたことが大差につながった。もともとそういうボクシングができる子。初防衛できたのは収穫だと思う。長くタイトルを守るには、幅広いスタイルを持つことが大事。
▽WBCスーパーライト級元王者・浜田剛史さん 今までの良さを残したまま、幅の広さも出した。4カ月で変身できたのはたいしたものだ。五回ぐらいから(亀田の)勝利を確信していた。ランダエタはリズムが狂っていた。今回は疑いのない勝利だ。
◇今回はきっちりと決着…亀田
賢いボクサーだ。「疑惑の判定」と批判を浴びた前回対決から4カ月半。自身の課題を的確に把握し、克服してきた亀田が、因縁の相手にきっちり決着をつけた。
時折ガードを下げ、足を使う。ガードを固めて強引に前へ出る「亀田スタイル」ではない。四回まではぎこちなかったが、五回からは右ジャブを多用し、相手の右ジャブを体を振ってかいくぐった。ボディー連打から左クロスにつなげるなど上下に打ち分け、離れ際の右フックも有効だった。相手の反撃には瞬時にバックステップ。スピードある出入りに、挑戦者はついていけない。攻防一体の新スタイルに、本人も「まだ完全ではないが、ようできたんじゃないか」と納得顔だ。
「この4カ月、何も楽しいことはなかった」と振り返る。前回は、一回にダウンを奪われるなど大苦戦。試合後は判定問題に加え、傍若無人な態度にも批判がわき起こった。自らまいた種とはいえ、バッシングの嵐はさすがにこたえた。
そんななかで、デビュー当初のビデオを見返すなど、今の自分に欠けている部分を探した。相手を崩すジャブ、入り際のダッキングやフェイント、フットワーク。史郎トレーナーは「原点に戻った。忘れていた基本を(亀田スタイルに)ミックスした」と説明した。
短期間での成長ぶりは非凡さの証明だ。「これからもずっとずっと勝っていく」「まだ自分のボクシングは出来ていない。一日一日練習せなあかん」。ビッグマウスの中に謙虚さが交じるのが亀田らしい。「浪速乃闘拳」が、新たなスタートを切った。【来住哲司】
○…ランダエタは1ラウンドから、「亀田があれほど走り回るとは思わなかった」と、スタイルの変化に焦っていた。前回は、真っすぐ突っ込んでくる亀田に、得意のカウンターでアッパーを決めてダウンを奪った。しかし今回は、激しく動き回る亀田に右ジャブを封じられ、捕らえ切れなかった。「止まって下の方にパンチを入れたかったが修正できず、自分の考えている試合ができなかった。(判定前に)亀田の完全な勝ちだと思った」とランダエタ。「亀田は私よりいい準備をした。試合後に私の腕を上げてくれたし、人間的にも成長した」と二度目の判定負けは納得した様子だった。
○…タイトル戦に先立って行われたスーパーフライ級ノンタイトル戦で、「亀田3兄弟」の二男大毅(17)がインドネシアライトフライ級4位、33歳のベテラン、モハマド・サディックに一回37秒KO勝ちした。ゴングとともにダッシュして連打。最後は左フックをあごにクリーンヒットさせた。「力で倒す。今年のテーマで締めくくれた」と納得の表情で、勝ち名乗りの後はリング上で、人気バンドB′zの「いつかのメリークリスマス」を歌うパフォーマンス。マイクが入っておらず、声が場内に響かないハプニングもあったが、本人は歌い続けて意に介さず。「フライ級、スーパーフライ級の王者たち、07年は首を洗って待っておけ」と、終始強気だった。
○…前回は、韓国、パナマ、フランスの3氏で構成したジャッジの採点が疑念を呼んだ。WBAは今回米国、英国、南アフリカからジャッジを招き、アジアと中南米は外した。レフェリーも、WBA審判委員長を務めるルイス・パボン氏(プエルトリコ)が務めるなど、一定の配慮が感じられる配置となった。
また世界ボクシング評議会(WBC)は先月、日本で行われた世界タイトル戦で、四回と八回の終了後にそこまでの採点を発表する「採点公開制」を初めて実施したが、WBAはまだ制度を導入していないため、今回の試合も途中採点は公開されなかった。
◇日本ジム所属の現役世界王者◇
新井田 豊(横浜光) WBAミニマム級
イーグル京和(角海老宝石)WBCミニマム級
高山 勝成(グリーンツダ)WBAミニマム級暫定
亀田 興毅(協栄)WBAライトフライ級
名城 信男(六島)WBAスーパーフライ級
長谷川穂積(千里馬神戸)WBCバンタム級