再戦に圧勝!興毅 涙の初防衛
再戦に圧勝!興毅 涙の初防衛
12月21日6時3分配信 スポーツニッポン
どんなもんじゃい!!浪速の闘拳が汚名返上を果たした。WBA世界ライトフライ級タイトルマッチ12回戦が20日、東京・有明コロシアムで行われた。4カ月ぶりの再戦で、王者・亀田興毅(20=協栄)は軽快なフットワークとボディー攻撃でファン・ランダエタ(28=ベネズエラ)を圧倒。ダウンこそ奪えなかったが、大差の3―0判定勝ちで初防衛に成功した。8月の初対決では微妙な判定勝ちで批判を浴びたが、文句なしの内容で逆風も封印。20代の初戦で遺恨を清算し、最高の形で激動の1年を締めくくった。
心の底からの叫びだった。リング上での勝利インタビュー。興毅は開口一番「どんなもんじゃい!」と吠えた。微妙な判定で勝利した8月のランダエタ戦から4カ月。逆風をはね返し、自らに厳しい視線を注ぎ続けてきたアンチファンに、真の王者が誰であるかを認めさせた瞬間だった。
前戦とは一変していた。宿敵ランダエタを相手に軽快なフットワークを駆使。弧を描くように位置を変え右ジャブを繰り出す。中間距離から相手の右ジャブにかぶせる左クロスが伸びる。「亀田とKOはセットや」と公言してきた男が勝つためにアウトボクシングに徹しポイントを稼いだ。
7回、繰り出した右ボディーに一瞬、ランダエタの足が止まる。そして相手の動きが落ちた10回からは高いガードでプレッシャーをかける従来の亀田スタイルに戻し、ロープ際に追い詰めて小気味よい連打を叩き込んだ。変幻自在のファイト・スタイル。ランダエタも脱帽の変身は、周囲を見返してやりたいという反骨心がすべてだった。
最大11ポイント差がつく文句なしの勝利。判定を聞くと左手でガッツポーズをつくった。「テレビで見ている人の中にはオレのことを嫌いな人もおる。勝ってごめんなさいと言いたいな」。控室では亀田節をさく裂させたが、その一方で「長くてつらい4カ月だった。圧勝で勝つと言うとったからプレッシャーあったけど良かった」と本音も漏らした。
小学6年からあこがれ続けた世界王者。だが、夢を実現させた19歳を待ち受けていたのは、世間の冷たい視線だった。ランダエタ戦での微妙な判定勝ちによる世界王座戴冠に批判が一気に噴出した。中には人格や家族への中傷もあった。「オレたちはどうせ嫌われものやから」。これまでなら結果を残すことで反論してきた。だが、9月にはスパーリング中に左まぶたをカット。自らのケガで試合が延期になり、仮病説がささやかれるなど、世間の風当たりはさらに強まった。
そんな時、難病と闘う少年ファンからの手紙を受け取った。「どうしたら、そんなに強くなれるんですか」。弱気になっていた自分自身が恥ずかしくなった。父・史郎さんも「いろんなことを言う人がおるけど、応援してくれるファンだっているんや」と励ました。
試合後、リング上のインタビューでトレーナーとして支えてきたその父に対するコメントを求められると「オヤジが壁になってくれた」と言っておえつした。
ファミリーに支えられて守った王者のベルト。しかし、これがゴールではない。次戦は来年3月に東京・両国国技館で、WBC王者との日本人初の2団体統一戦も浮上している。「この階級でやれることが分かった。もっと強くなれる。課題も見つかったしな。次は亀田場所や」。真っすぐ前に進むスタイルから弧を描くフットワークがもたらした勝利。苦戦がもたらした回り道も、20歳には決して無駄ではなかった。
≪興毅に聞く≫
――おめでとうございます。
「どんなもんじゃい!」
――前回同様に判定、12回での決着でした。
「ランダエタもよう頑張った。結構ええパンチも入れてたしな。この4カ月間、何も楽しいことなかった。言葉では言い表せない。でも、ええ決着つけれてよかった。この日のために死に物狂いで頑張ってきたから」
――見事な有言実行でした。
「いや、プレッシャーはあったよ。やっぱり前回が前回だけにな。変な試合してもうたから。オレを応援してくれるファンのみんなに、やっぱり悪い気持ちにもさせたしな。それだけはオレもイヤやったから」
――前回ダウンをさせられた相手だったが。
「前回はオレが変な試合したからな。あれは亀田興毅やなかったからな。あれはオレの親せきか分からんな。今回は本物の亀田興毅が出てきたから。頭も変わってるやろ。ははは」
――8月に父に渡したベルトが腰に巻かれているが。
「前回勝ったとき、ベルト持って寝ようと思ってたけど寝られへんかったからな。きょうはベルト持って寝られるわ」
――父へのメッセージは?
「この4カ月間ずーっとオレらいろいろバッシングとかされたけど、常に前に出て守ってくれたんが親父だった。常に壁になってくれたからな。何もないところから世界王者になったんやからな。ずっと一緒にやってきたんやから、引退するまで親父とやっていく。親父がもっと認められるように、世界最強になる」
――ファンへ一言。
「ファンのみんなにええクリスマスプレゼントになったかな。メリークリスマス!」