“吠えない闘拳”興毅 信玄の兵法で
12月17日11時26分配信 デイリースポーツ
ボクシングWBA世界Lフライ級王座戦12回戦(12月20日、有明コロシアム)、“浪速の闘拳”が戦国武将・武田信玄の境地に入った。16日、都内の病院で予備検診が行われ、亀田興毅(20)=協栄=が戦国時代の名将・武田信玄の旗印「風林火山」からヒントを得た「動かざること山のごとし」を実践した。この日の予備検診は時間差で行われ、両者の接触はなかったが、ビッグマウスをさく裂させたランダエタ(ベネズエラ)に対し興毅は“沈黙”を守った。天下統一も夢ではなかった信玄の兵法で、興毅がランダエタを返り討ちにする。
「静」と「動」がくっきりと分かれた。この日の予備検診は前回同様に時間差で行われた。ランダエタが検診、会見を終えた5分後、入れ違いに興毅が会見場に登場。8日の公開練習以来8日ぶりに公の場に現れたが、終始落ち着き払い、王者の風格を漂わせた。
興毅に先立って行われた会見で、ランダエタが吠(ほ)えまくった。12日に来日してから一貫して絶好調をアピールしており、この日も「200%の状態」とキッパリ言い切った。また興毅に対しては「彼(興毅)は私がチャンピオンになることを知ってるだろう」と挑発気味にコメントした。
これを受けた形の興毅だが、挑発にはどこ吹く風。「挑発なんて別に何とも思わんよ。勝手に言っといたらええやん」と口元を緩め、薄ら笑いを浮かべた。挑発を堂々と真正面から受け止め軽く受け流す。まさに「動かざること山のごとし」の心境だった。
興毅は常に試合を「戦争」と表現する。リング上での精神的駆け引きはもちろん、世界戦となればリング外での駆け引きも重要な要素を占める。興毅は日ごろからメンタル面の研究を怠らず、知人から武田信玄の武勇伝を聞き、その兵法に傾倒。今世界戦でさっそく取り入れた。
今回の試合のテーマはスピードとパワーの融合。これは武田信玄の兵法「風林火山」と重なる。スピードを持ってして怒とうのごとく攻め立てる。戦国最強の武将の精神をそのままにリングに上がる。
検診では、心肺機能の成長ぶりを証明した。スタミナを測る基準となる脈拍は今回、1分間に46回だった。前回計測した7月27日の時は49回。興毅はマラソン選手並みの心肺機能を示した。
「この4カ月間は、試合のことしか考えてへんかったわ。ランダエタの印象?新聞でしか見てへんから前と変わらんよ。俺は少し首が太くなったんとちゃうかな。アゴも強くなったで」。静かなる闘志を胸に秘め、控えめなアピールで締めくくった。