29日、第19回東京国際映画祭“アジアの風”部門、新作パノラマに出品されている『シルク』が上映され、主演を務めた江口洋介とスー・チャオピン監督が観客とのティーチインに臨んだ。当日は、日曜日ということもあり、若い女性を中心にほぼ満席となる盛況ぶりだった。
江口にとって、本格的なアジア進出となった今作は、台湾発のサスペンス・スリラー。出演オファーが来たときは「ついに、アジアの映画に出られる!」と意気込んだそうだが、いざ脚本を読むと「ひょっとして、妖怪の役かな?」と二の足を踏んでしまったとか。実際には、妖怪役ではなく、少年の幽霊の謎を追いかける日本人科学者という役どころだったが、その科学者が天井を逆さ歩きするなど奇怪なシーンがあったことから、こうした誤解が生まれたようだ。
中国語が話せない江口に対して、「中国語の飛び交う現場で、どうやって周囲とコミュニケーションしたのですか?」という質問も飛び出したが、これに「カンですね!」とスマイル全開で即答。さわやかな江口の姿に、場内は大いに沸いた。
監督を務めたスー・チャオピンは、そんな江口のさわやかさに「何か」を直感していたそうだ。「人がいい、優しいといったイメージの強い江口さんですが、その裏に、予測できない何かを隠し持っていると感じていた。この映画で、彼の知られざる一面を発掘したかった」という監督の言葉通り、江口は、死や霊界といった未知の世界を追い求める日本人科学者をダークに好演し、これまでのイメージを払拭する存在感を見せつけている。
台湾、日本をはじめ、アジア各国の才能が集まった本作について、「とても刺激的。いいステップになった」と語る江口に対し、チャオピン監督も「日本人スタッフのプロ意識の高さは、とても勉強になった」と両国のスタッフを称えあった。
(シネマトゥデイ) - 10月30日12時46分更新