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【中華芸能】『百年恋歌』侯孝賢監督が来日、西島秀俊も応援に
台湾が誇る映像クリエイター、侯孝賢(ホウ・シャオシエン、=写真左)監督が、公開中の新作映画『百年恋歌(原題:最好的時光)』のプロモーションのために来日。10月24日にシネスイッチ銀座で舞台挨拶が行われ、映画撮影時のエピソードなどについて語った。

 侯監督は今回の『百年恋歌』のテーマについて、「現代の恋愛観と以前の恋愛観はいろいろな意味で異なっており、その対比を描きたいという思いで撮った」と述べ、「現代の恋愛では、お互いに関係を結ぶのは非常に早いが、心がそれに追い付かずにいろいろなものに邪魔されてしまっている。過去の物語と一緒に描くことで、そのことを強調したかった」との思いを明らかにした。

 また、この作品が1966年、1911年、2005年の三つの物語で構成されることについて、「第1部の1966年は中国で文化大革命が起こるなど、台湾で非常に反共機運の高まった時代、第2部の1911年は辛亥革命によって清朝が倒れたことが、台湾の文化人に大きな影響を及ぼした時代であり、こうした時代背景を踏まえてこれらの時代を選んだ」と語った。

 舞台挨拶には、侯監督を敬愛してやまないという俳優の西島秀俊さん(=写真右)も駆けつけた。西島さんはシネマヴェーラ渋谷で開催された「百年の恋歌・侯孝賢──ホウ・シャオシエン映画祭」にも連日足を運んだほどの熱烈な侯監督ファンで、舞台の上では西島さんの質問に侯監督が答えるという形で、二人が映画談義に花を咲かせた。

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西島「現代というのはドラマが生まれづらいものですが、侯監督は意識的に現代を描いておられるのはなぜですか」

侯「これまで我々は、自分が成長してきた時代、つまり過去の時代をあまりにも撮り過ぎてしまい、現代を描くことは少なかった。我々は自分のおかれた環境や、家族、友人、社会との関係を見失いがちであり、これらの関係がどういうものかというのは過ぎ去って初めて分かることもあります。今回の作品で現代の話を描きましたが、1966年と1911年という過去を描くことで現代を理解する、そういう描き方を模索しました」

西島「三つの異なる時代をテーマに撮影するのは、監督もスタッフも大変ではなかったでしょうか」

侯「最初は若手監督たちと、一人1部ずつ撮影する予定でしたが、結局自分が3本撮ることになってしまいました。台湾の新聞局の助成金を受けたこともあって、その期限内に撮影を終わらせる必要がありましたが、最初に撮影した2005年の部分に時間がかかってしまい、それを撮り終わった頃には期限が3週間しか残っていませんでした。第2部は10日、第1部は6日で撮影しましたので、非常に焦っていました。もし、撮影する順番が違っていたら、全然違う作品になっていたかもしれない(笑)」

西島「三つの時代とも主演を演じたお二人(舒淇と張震)への演出では苦労なさいましたか?」

侯「身近な時代である2005年から撮り始めたのは、主演の二人にとっては良かったかもしれません。二人とも大スターなので最初はお互いに競争心を露わにしていましたが、撮影するうちに、それも緩和されました。また、撮影時間が限られていたことで、逆に迷うことが無く、テーマの焦点に向かって撮影することができました」

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 「常に新たな可能性を模索して前進する侯監督を尊敬している」という西島さんに対し、侯監督からは「ぜひ一緒に仕事をしてみたい」とのエールが送られる場面も。二人のトークに会場も終始和やかな雰囲気に包まれた。

 フランスで次回作の撮影を終え、今回の緊急来日となった侯監督。その次回作は、往年の名作『赤い風船』(1956年)をモチーフに、全編フランスロケで描かれた作品となるもよう。仏オルセー美術館の企画によるこの作品は、「過ぎ去ってはじめて分かる母親と息子の関係」をテーマにした、監督初のフランス語作品となる。世界的な巨匠として知られる侯監督だが、今なお新たな映像描写への挑戦を続けており、次回作でもまた違った一面を見せてくれるはずだ。

 日本では、9月30日に11年ぶりとなる書籍「百年の恋歌-侯孝賢」(販売元:プレノンアッシュ)が発売となり、11月25日には、『ステキな彼女』、『坊やの人形』などの初期4タイトルを収録した「侯孝賢傑作選DVD-BOX80年代編2」(発売元:紀伊國屋書店)の発売が決定している。この秋は日本のファンにとって、侯監督の「過去」と「現在」を知る上で、またとない機会となりそうだ。(Text:アジア映画ライター 小石川駿)


(サーチナ・中国情報局) - 10月27日20時41分更新